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去る4月7日(土)、絵本とピアノのコンサート~ことばと音で紡ぐ「春」の情景~が開催されました。出演は、ピアニスト(作曲家)で絵本朗読家の馬部恵子さん。響き館では3度目の公演ですが、今回は時間を1時間に拡大し、とても充実したプログラムとなりました。今回馬部さんがピアノと絵本を通して描こうとされたのは、冬から春へと変化していく季節の情景。冬景色や雪をテーマにしたピアノ曲から、暖かい春の情景まで、しっとりと奏でられるピアノ曲は、どれもとても美しく、一音一音が心の奥深くにそっと届くようでした。しかし何といっても今回一番の聴きどころは、朗読とオリジナルのピアノ曲を合わせた、絵本の「弾き語り」。まど・みちおさんの詩と南塚直子さんの銅版画が美しく溶けあう絵本「キリンさん」(小峰書店)からは、「くまさん」と「はるのさんぽ」が紹介されました。みずみずしい春の喜びを感じさせるピアノの旋律に、馬部さんの優しいトーンの声が重なり、美しい銅版画に見入る---そんな至福のひと時でした。また桜をテーマにした絵本の紹介では、中盤の躍動感のあるピアノのリズムに合わせた伸びやかな朗読が素晴らしく、またラストでは、ひらひらと舞う桜の花びらを表現するピアノの音型が、余韻たっぷりに、いつまでも聴き手の耳に残りました。ピアノを教える傍ら、15年以上に渡る小学校での読み聞かせの活動の中で、絵本のイメージに合わせたピアノ曲の作曲に取り組まれてきたという馬部さん。その作曲のセンスは本当に素晴らしくて、絵本の絵や物語にこめられたメッセージを、見事に音で表現されます。以前は朗読とピアノ演奏を分ける形だったのが、最近力を入れられているのが、ピアノを弾きながらの朗読、言わば絵本の「弾き語り」というスタイルです。一般的な歌の弾き語りと異なり、メロディーのない朗読では困難と思われますが、馬部さんの朗読はむしろ弾き語りによって、より伸びやかで、活き活きとしているように感じられました。それはやはり、自身で作曲された音楽の力が、語りの世界を更に豊かにしてくれているということなのでしょう。今回の公演は、絵本の「弾き語り」の魅力をたっぷり味わうのと同時に、これからの可能性に対する期待がますます膨らむものでした。プログラム作りから、とても真摯で丁寧な準備を重ねてくださった馬部恵子さん、そして初めての土曜日開催ということもあり、多数ご来場くださった皆様、本当に有難うございました。

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2024.12.04 Wednesday