お知らせ(11.1 更新! NEW!)
「朗読と音楽で綴る~文学と絵本散歩~」、盛況にて終了いたしました。
5日(日)、秋の朗読会として、「朗読と音楽で綴る~文学と絵本散歩~」が開催されました。出演は、朗読家の馬場精子さん。2011年2月にヴァイオリニストの高橋真珠さんと素晴らしいコラボレーションを楽しませてくださって以来の登場となりました。「文学と絵本散歩」というタイトル通り、馬場さんが得意とする日本の文学作品と絵本を堪能していただきました。新実南吉の心温まる小品から始まって、心に響く短編童話、そしてメインは、原画展を開催中の「わたしは樹だ」(松田素子/文 nakaban/絵)。
確かな朗読技術と、豊かな声、そして心のこもった語り口。馬場さんの朗読は本当に見事で、私達聴き手の心をぐっと引きつけるものでした。特にバッハの無伴奏チェロ組曲と、nakabanさんの生命溢れる力強い絵とのコラボレーションとなった「わたしは樹だ」の朗読は圧巻でした。樹齢何千年という「屋久杉」が語る物語を、馬場さんは見事に消化して、豊かで力強い朗読で表現されました。屋久島の固い岩ばかりの過酷な環境の中で生きる力強さ、小さな菌やコケたち、他の樹々と支え合いながら生きる生命のつながりと優しさ、そしてラストは、まるで「樹」の心そのものが、馬場さんの朗読を通して直接語りかけてくるように思えるほど、迫真の表現でした。ホリスティック(全体、つながり、バランスなどの意味)をテーマにしたこの絵本は、「樹」の物語であると同時に、何度も読み返しているうちに、私達自身も自分の存在について考え、その不思議さ、に気づかされます。「そうして いつか…、わたしにも たおれる ひが くるだろう。生きて 生きて、そして そのときが きたら、わたしは ゆっくりと たおれよう。」のフレーズに、自分自身の姿を重ねられた聴き手もおられました。
プロの「朗読家」として、常々、朗読を「声の芸術」としてもっと認知してほしいという強い想いを持っておられる馬場さん。素晴らしい原画に囲まれながら、その作品を生の朗読で聴けるという幸せと、そんな語り手の気概に心揺さぶられる想いの朗読会でした。「ことば」と「語り」の力の素晴らしさを改めて感じさせててくださった馬場さん、台風接近中の不安定な天候の中、遠く会場まで足を運んでくださったご来場の皆様、進行のお手伝いをしてくださった中村さん、本当に有難うございました。