お知らせ(11.1 更新! NEW!)
4年ぶり開催の「朗読と音楽で綴る~文学と絵本散歩~vol.9」、豊かで幸せな時間でした!
実に4年ぶりの開催となった、「朗読と音楽で綴る~文学と絵本散歩~ vol.9」が無事に終了しました。当日は、一時雪がちらつくほどの厳しい寒さとなりましたが、本公演、追加公演ともに満席となり、近年を代表するような、珠玉の絵本たちを、朗読家・馬場精子さんの素晴らしい語りで、音楽と絵とともに堪能する、とても贅沢で幸せな時間となりました。
静謐なリュートの調べに、馬場さんの優しい語り口が心に沁みる「ひばりに」(内田麟太郎/詩 うえだまこと/絵 アリス館 2021)。震災で傷つき、ずっとうつむいていた女の子が、一瞬顔を上げ、たんぽぽの綿毛を飛ばします。言わば彼女の「命」がこしらえた、ちいさな風と奇跡が、静かに胸を打ちます。
ヒグチユウコさんの絵本デビュー作「ふたりのねこ」(祥伝社 2014)では、ヒグチさんの驚くほど緻密な画力と、馬場さんの抑制をきかせながらも、情感豊かでドラマティックな語りにひきこまれます。あの夏の終わり、本当の家族以上に、確かに「家族」だった、ねことニャンコの姿に、思わず胸が熱くなります。
そして最後は、絵本として初めて文学賞を受賞した「海のアトリエ」(堀川理万子/作 偕成社 2021)。こちらは、堀川さんの温かみのある美しい絵も相まって、まるで上質な映画を観ているような、贅沢な味わい。人生で忘れることのできない、大事なひととの出会いと、一緒に過ごした宝物のような時間が、時には活き活きと、時にはしっとりと語られます。
朗読されている馬場さんの豊かな表情もまた魅力的。馬場さんはよく「(登場人物の)声は作るのではない」とおっしゃるのですが、確かな作品解釈と人物理解から紡ぎ出されるその声と語りは実に自然で、耳を傾けていると、まるで本当に女の子と絵描きさん、そしておばあちゃん本人が語っているように思えてくるのです。(当日は写真が撮れなかったので、過去の「文学と絵本散歩」の公演写真です。)
開館以来ずっと追求してきた、朗読と音楽、生身の人間の「声」で届ける絵本。コロナでずっと中断していましたが、今回またこうした豊かな時間を持てたことが、本当に幸せで胸がいっぱいになりました。当日は、偕成社さんのご協力で、2022年秋に開催した「海のアトリエ」原画展も、美しいパネルで再現され、公演に華を添えました!
開催にあたり、台本作り・リハーサルから本番まで、いつも真摯に心をこめて取り組んでくださる馬場精子さん、運営面で快くご協力くださったアリス館さん(末松さん、槇野さん)、祥伝社さん(宮島さん)、偕成社さん(井上さん、西川さん、渡邉さん)、そして何より、語りと音楽の最後の余韻が消える瞬間まで熱心に耳を傾けてくださった、ご来場の皆様、本当に有難うございました!