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  去る10月28日(土)、ジミー・リャオ 絵本「星空」朗読会~絵本とジャズの調べvol.12~が開催されました。朗読とスタンダードジャズの名曲を融合させて、絵本の新たな魅力をお届けしてきたこのシリーズも今回が12回目。ジャズボーカリストの樋口みづほさんと、ジャズピアニストの西脇敦子さんが、満を持して今回取り組んだのが、台湾の国民的絵本作家・ジミー・リャオの傑作「星空 The Starry Starry Night」。2009年に発表され、映画化もされた本作は、ジミーの最高傑作と言われながら、なかなか邦訳されず、長年待ち望まれていた作品です。 

 絵本としては異例の100ページ近くに及ぶこの大作を、お二人は、見事な解釈と構成で、朗読とジャズを通して表現してくださいました。誰もが経験する、思春期の孤独と不安・・・主人公の女の子は、ある転校生の男の子との出会いをきっかけに、大好きだったおじいちゃんと一緒に見た「星空」を思い起こします。作品は、ジミーならではの緻密で鮮やかな絵画世界と、モノローグで展開していきます。今回お二人が、メインテーマとして選んだのがスタンダードジャズの名曲"Stardust"。冒頭のピアノによるモチーフから、何度も形を変えて演奏され、二人が星空を見るクライマックスシーンでは、樋口さんの圧倒的なボーカルの力に心を揺さぶられ、また少女が少し成長して大人になったラストでは、もう一度スキャットでしっとりと余韻たっぷりに歌い上げられました。また公演のもう一つのハイライトは、中盤、二人が旅に出る決意をして、おじいちゃんの家へ向かうシーン。ここは文字のないページが続くのですが、ここでは西脇さんの即興演奏が見事な力を発揮し、そこにさらに樋口さんの(歌詞のない)即興のボイスが重なるという新たな試みで、不安と希望が交錯する心象風景を見事に描き出しました。即興はジャズの最大の魅力の一つですが、作品を前に、目の前で音楽が生み出されていく瞬間を共有できるのは、とても幸せでワクワクする経験でした。 

 今回の公演を通して、やはり「星空」という作品の素晴らしさ(ジミーならではの繊細かつ鮮やかな絵画世界と、シンプルながら優しく心の痛みを包んでくれる言葉)を再確認すると同時に、朗読とジャズの魅力を大いに満喫することができました。公演まで何か月にも渡り、選曲と台本作りに取り組んでくださった樋口さん、絵本に造詣が深くジャズピアノの魅力をふんだんに見せてくださった西脇さん、公演に当たりお忙しい中快くご協力くださったトゥーヴァージンズの齋藤さん、そして雨の中ご来場いただき、この長大な作品に集中してじっと耳を傾けてくださった皆様、本当に有難うございました。響き館オープン以来、歩みをともにしてきた「絵本とジャズの調べ」に、今後もどうぞご期待ください。

 

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 「星空 The Starry Starry Night」(ジミー・リャオ/作・絵 

  天野健太郎/訳 two virgins/刊 税込み2160円)

 

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2024.10.08 Tuesday