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 去る9月24日(土)、朗読家の馬場精子さんをお迎えして、3度目となる「朗読と音楽で綴る~文学と絵本散歩~」が開催されました。台風の影響も含めて、長く秋雨が続いていましたが、当日は久しぶりに穏やかな天候に恵まれました。

 今回も、文学作品から、新美南吉の「去年の木」「でんでんむしのかなしみ」をはじめ、大人を対象に、音楽の演出とともに、じっくりと絵本の朗読を聴かせてくださいました。馬場さんの朗読は、今回も素晴らしい完成度で、聴き手の心を強く揺さぶるものでした。芯のある、心に響く声には、常に「強い意志の力」が感じられ、ドラマティックな場面では、十分すぎるほどの感情の起伏をもたせつつ、決して節度を失わない、まさに「声の表現者」として、私達にしっかり「物語」を伝えてくださいました。馬場さんが日ごろよくおっしゃる事ですが、朗読する者は、「どんなに悲しい場面でも、決して感情的になって、自分が泣いてしまってはいけない」そうです。公演を聴いていて、本当にそのことを納得させられました。また公演のもう一つの醍醐味である、音楽とのコラボレーションも、とても鮮やかでした。言葉と同じく、音楽にも、メロディーやリズムといった、表情の変化がありますが、馬場さんの朗読は、見事にそれを捉えていて、まるで言葉と音が、互いの力を引き出しあっているかのようでした。これは、洋の東西を問わず、様々な楽器とコラボレーションを試みてこられた馬場さんの朗読ならではの魅力だと思います。

 長いキャリアを通して「芸術としての朗読」を追求してこられた、馬場精子さん。その圧倒的な表現力の高さに改めて感銘を受けるとともに、この公演では、そこに素晴らしい「絵」と「音楽」が加わることで、また新たな「芸術」が生まれてくるのを感じました。ご来場のお客様の感想に「まるでいい映画を観ているようでした」という嬉しいお言葉がありました。何よりも人の心をリアルに伝えられる「声」、そして、美しい「絵」と「音楽」、それらが三位一体となることで、絵本は、立派な「総合芸術」になる----そんな想い、夢を、新たに心に刻むことのできる、幸せな一日でした。

 この小さな空間での朗読に、たっぷりのエネルギーを注ぎ込んで準備をしてくださった馬場精子さん、そしてお忙しい中をお越しくださり、作品に真摯に耳を傾けてくださった、ご来場の皆様、そして何よりも素晴らしい作品たちに、心から感謝しております。本当に有難うございました。これからの「文学と絵本散歩」シリーズにも、どうぞご期待ください。

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2024.11.23 Saturday