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 9月最初の週末、本と音楽のイベントとして、「東山魁夷を聴く~絵本とピアノの贈り物 vol.2~」が開催されました。出演は、北欧(ノルウェー、フィンランド)に留学後、現在は日本と北欧を拠点に演奏活動をされているピアニスト、安保美希さん。昨年12月に続いての響き館公演となりました。前回は、得意のレパートリーである北欧の音楽を、北欧の絵本紹介とともに聴かせてくださいましたが、今回はがらりと雰囲気を変えて、オール、ドイツ・オーストリアの名曲プログラム。 8月29日より始まった「東山魁夷展」(@京都国立近代美術館)にちなみ、魁夷にちなんだ絵本や画文集の紹介とともに、見事な演奏を聴かせてくださいました。絵本「白い馬」(東山魁夷/絵 松本猛/文 講談社)の紹介では、魁夷の代表作となった連作「白い馬」シリーズの中の一枚「緑響く」の誕生の契機となった、モーツァルト「ピアノ協奏曲 K.488」第2楽章他を、また画文集「四季めぐりあい」(講談社刊)の紹介では、季節ごとのイメージで、ベートーヴェン、ブラームス、シューベルト、シューマンの珠玉の名曲たちを演奏されました。ドイツ・オーストリアは、留学や旅行を通して魁夷にとって大切な土地であり、またモーツァルトの音楽との出逢いは、生涯を共にする「伴侶」を得たというほど、大きなものだったそうです。安保さんの紡ぎ出す音楽は、その誠実なお人柄のままに、一つ一つの音や旋律を大切にかみしめるような、丁寧な演奏で、それぞれの曲の魅力が素直に心に響いてきます。そして、何といっても今回特に感じたのは、その選曲の素晴らしさです。どれも、絵のイメージから直感で選ばれたとのことでしたが、公演のMCでは、曲の解説とともに、魁夷はもちろん、ご自身との関りやイメージなども丁寧にお話してくださり、初めて耳にする曲でもとても身近に感じることができました。晩年、魁夷は「描くことは「祈り」である」と語ったそうです。音楽を聴きながら魁夷の絵を改めて眺めていると、魁夷が「風景」の向こうに描こうとしていたものが、見えてくるようにも思いました。

 本のある空間に魅了され、昨年から「本と音楽のプロジェクト」(Honmonotone)をスタートさせた安保さん。その新しい試みと演奏スタイルで、今後ますますの活躍が期待されます。そしてまた響き館でも、絵本とともに素敵な音楽を奏でてくださる日を楽しみに待ちたいと思います。北欧での演奏活動から帰国されたばかりのお忙しい中、公演準備に取り組んでくださった安保さん、雨の中会場へお越しくださり、熱心に耳を傾けてくださったご来場の皆様、本当に有難うございました。

 

※「生誕110年 東山魁夷展」は、10/8まで京都国立近代美術館にて開催中です。氏の芸術の集大成の一つ、圧倒的なスケールの唐招提寺の襖絵の他、年代やジャンルごとに代表作を一度に目にすることのできる貴重な機会となっています。是非、足をお運びください。

 

<演奏曲目>

シューマン「森の情景」Op.82 ~第1曲「森の入り口」(オープニング)

モーツァルト:ピアノソナタ K.282~第2楽章

モーツァルト(ライネッケ編曲):ピアノ協奏曲 第23番 K.488~第2楽章

ベートーヴェン:ピアノソナタ第24番「テレーゼ」~第1楽章

ブラームス:6つのピアノ小品 Op.118~第2曲:間奏曲

シューベルト:即興曲 第3番 Op.90-3

シューマン:子どもの情景 Op.15 ~第1曲「知らない国々」

ドビュッシー:夢(アンコール)~企画展おすすめ「にいさん」(いせひでこ/作 偕成社)に寄せて

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2024.04.24 Wednesday