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去る2月24日(土)、冬の企画展のフィナーレを飾るイベントとして、「朗読と音楽で綴る~文学と絵本散歩~ vol.5」が開催されました。出演は、今回が6度目、「文学と絵本散歩」シリーズとしては5回目となる、朗読家の馬場精子さん。昨年5月の春の公演とは対照的に、今回はまさに寒い冬に味わうのにピッタリな文学作品と絵本のプログラムで、再び私たちを魅了しました。前半、マイクを通さない肉声のみで語る「手袋を買いに」(新美南吉)では、キラキラ目に眩しいような、真っ白な雪の情景を目の前に浮かべ上がらせ、その中の親子のキツネのやりとり(子守歌のところでは、美しい声で歌ってくださいました)が、じんわりと心に温かい灯をともしてくれました。作者は29歳の若さで早逝されましたが、その短い人生の中で、私たちの心の琴線に触れる童話をたくさん残してくれたことに、改めて感謝したくなりました。そして後半は、海外の短編小説を元にした、壮大な物語の絵本。ここでは、クラシックのチェロの名曲と、繊細で陰影に富んだ美しい絵画とのコラボレーションで、馬場さんの情感豊かで、心を揺さぶるような語りの力が、ぐいぐいと私たちを物語の世界に引き込みました。馬場さんの感情表現は実に豊かで自然で、私たちの心の奥深くに響きます。馬場さんはよく「悲しい気持ちを表したい時に、ただ悲しそうな声を出そうとしてはいけない」というような趣旨のことをおっしゃるのですが、それは言い換えれば、物語を深く理解し、その世界に入って登場人物になりきることで、それぞれの場面や登場人物に相応しい声が自然と湧き出てくるのでは---と、そんなことを感じました。だからこそ、ご参加者の感想にありましたように、馬場さんの朗読では、小さな子供の声から、女性の語り手でありながら、時には男性の登場人物の声まで、まったく違和感なく聴き入ることができるのかもしれません。今回の公演でも「語りと、音楽と絵が実によく合っていて、いい映画を見終わったような充実感がある」といった嬉しいお声をたくさんいただきました。「文学と絵本散歩」はちょうど5回目の節目となりましたが、「芸術としての朗読」を追求し続けておられる馬場さんとともに、大人にこそ味わってほしい「芸術作品」として、これからも文学や絵本の世界をお届けできたらと思っております。長期間に及ぶ準備から当日まで、全力で公演に取り組んでくださった馬場精子さん、そしてまだまだ厳しい寒さの中、ご来場いただいた皆様、本当に有難うございました。

※写真は「手袋を買いに」(新美南吉)を朗読する、馬場精子さん。

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2024.04.19 Friday